医 療

1. 医療費抑制策の見直しと国民皆保険制度の堅持について
 急速な少子・高齢化の進展が今後も予測される中で、将来世代への過度な負担を残さないために、国家的財政の立直しが必要とされており、その中で、医療における給付と負担について必要最小限の見直しを図ることも必要とされている。
 しかし、医療費については、これを単なる経済事業として扱うことは到底出来ないし、その事業的収支のみに着目した医療費抑制は間違いである。なによりも、良質な医療サービスが担保された上でのことでなければならないし、公費負担が果たす役割がきちっと維持されなければならない。
 国民皆保険制度は世界で我が国だけが成し遂げた価値ある国家的制度である。この制度があってこそ、国民すべてが何時でも、何処でも心配せずに医療を受けられるという「医療のフリーアクセス」が実現できるのであり、国民が安心して暮らすための最大の保障であると考える。
 この事は、一方で安心して働ける国としての基本的な条件にもなっており、我が国が、良質な労働人口を維持する上でも大きな要素として考えられる。
 したがって、将来にわたり国民皆保険制度を堅持していくことは、健全な日本社会の維持発展のためには欠くことのできない、極めて重要なこととして認識している。

2. 経営基盤の安定と医療安全の維持について
 経営基盤の安定こそ健全な医療サービスを提供していく上での大前提として維持・確保すべきものと考える。安定した経営無くしては、「要員確保」、「医療技術の向上」、「安全システムの向上」など、どのような対処もとりえない。施策的には、「経営に有用な会計情報の提供」など医療施設経営安定化推進事業の充実・強化を積極的にはかる必要がある。医療安全対策については、先般の法改正で制度面からの強化、充実を図ったところであるが、今後は自民党の「医療紛争処理のあり方検討会」でもさらなる検討を進める。

3. 安心して子供を生み育てるための環境整備について
 全国的に医師不足が顕著な産科・小児科についての医療体制の確保は、少子化社会が進展する中での最も急を要する課題であると認識する。
 その上で、
@子供を犯罪から守る安全で安心な街づくりの推進
A「三世代同居」を含む多様な居住形態への対応
B「職住近接の推進」や「保育所を併設した住宅の供給促進」など子育てしやすい住宅・居住環境の確保
C「集いの広場」や「地域子育てセンター」等子育て支援拠点の整備など総合的な背策の展開を急ぎ、子供を生み育てる喜びを実感できる地域の環境作りを進める。

ページトップへ▲

4.医師および看護師等の偏在解消と
  良質な医療を提供する体制の確保充実について
 医師および看護師の偏在は、経済行為として医療をとらえることから起こってくるという側面がある。収益を求めやすい所に人が集まるというのは、ある種、自然な結果といえる。かつて、大学など教育機関に医師の配分機能があったが、現在その機能は大きく減退したと言われる。
 これらに対応し、ただ医療関係者に義務行為を求めるだけでは解決はできない問題である。
 医師および看護師の偏在を解消し、良質の医療を提供し続けるためには、国として、まず、より良く医療関係者をはぐくむ環境を作り上げていくことが肝要であり、また、医療関係者に対する経済的な保障と、医療事故などに対する具体的な保障制度などを創設していく必要がある。
 あわせて、「小児救急医療体制」や「急性期入院医療における看護体制」の拡充・強化を図る必要がある。

5.新しい高齢者医療制度のあり方について
 高齢者医療制度の目的は、公的負担の割合を一般の医療保険より手厚くすることが基本である。収入のある高齢者には応分の負担を求めるにしても、本来収入が少なく、様々なハンディキャップを背負うという高齢者の基本的な立場を良く考慮し、セーフティネットの構築など、国としての十分な支援を図っていかなければならない。さらに高齢者世代と現役世代の負担を均衡化し、公平で分かりやすい制度とする必要がある。このため、75歳以上の後期高齢者については、その心身の特性等を踏まえ、平成20年度に独立した医療制度を創設し、また65歳から74歳の前期高齢者については、前期高齢者の偏在による保険者間の医療負担の不均衡を調整する制度を創設する。国民皆保険制度の趣旨に沿った、高齢者医療の中での公費負担のあるべき姿についてもさらに突っ込んだ検討をすべきと考える。
6.高齢者医療のマクロ指標に基づいた「伸び率管理」について
 GDPを基本に医療費の伸びの目標を設定することについては、医療費の伸びには経済成長率と連動しない要素があり、また、必要な医療を確保しなければならないといった、医療の特性に十分留意する必要があり、適当ではない。

ページトップへ▲

7.医療の株式会社参入について
 株式会社は利益を株主に還元することを目的とする企業体であり、経済的利益を生み出さない医療行為は避けられる危惧があり、また医療上のモラルハザードが容易に起こる懸念もある。さらに、医療費の高騰や安易な撤退による地域医療の確保への支障などの恐れがあるため、現在認められている経済改革特区以外での参入は慎重の上にも慎重に対処すべき問題である。8.今般成立した医療保険制度改革法について今回の法改正においては、持続可能な国民皆保険制度の構築を前提に、
@ 医療費適正化の総合的な推進
A 新たな高齢者医療制度の創設
B 都道府県単位を軸とした保険者の再編・統合などを行うこと・国・都道府県による医療費適正化計画の策定・後期高齢者医療制度を運営する広域連合設立支援
 などとされたところである。が、ただ単に医療費削減を進めるための施策になってはならないし、国民の痛み、医療サービスを提供する側の痛みなどを十分考慮する必要があり、今後の医療制度維持について不安を残すことがないような運営を図る必要がある。また、保険者の再編・統合については、これもただ単に都道府県にのみ今後の医療制度保持の責任を突然押しつけることにならないような運営に努めなければならないし、地域住民の年齢構成、収入その他のちがい等で地域的不公平な状況を生じてはならない。生命に関わる医療制度はあくまで国が責任を持つ中で、国民皆保険の根幹として維持してゆくべきであり、自分自身もその方向で汗をかいていきたい。

8.医療提供体制について
 わが国では国民皆保険制度の下、また医療関係者の高いモラルに支えられ、誰もが安心して医療を受けられる体制が確立され、世界最長の平均寿命や高い保健医療水準が達成されている。一方で、平均在院日数が長いこと、医療機能の分化・連携が十分進んでいないこと等もいわれており、特定の地域などにおける医師の偏在問題の深刻化など課題も残る。今次の医療制度改革において、
@ 療養病床の再編成
A 医療計画制度の見直し
B 医師確保対策
C 医療に関する情報提供の充実
D 医療安全対策の強化
 などに取り組むこととなったが、単に財政削減という側面だけからの改革にならないよう注意が必要である。同時に質の高い医療サービスの確保を第一に考えていく必要がある。
 医療機能の分化・連携については、まず受益者たる国民全体の期待と需要に添ったもので無ければならない。また棲み分けは人為的に強制して実現できるものではなく、そのことができるだけ自然な形で進んでいくことが肝要である。
 すでに産婦人科医、小児科医、麻酔科医においては、その医師不足が顕著である。部分的ながらも忌避的現象が起こっていることは更に憂慮されるところである。従事者に対する経済的な保証の必要性は、論を待たない所であるが、さらに緊要な課題は、長期かつ安定した方針の下、志を高く持つ若者がこの分野により多く参加してくる体制を急ぎ構築していくことである。
 国民皆保険制度」の基本的趣旨にのっとり、国家的な調整機能が十分担保される中での改革となるように留意していく。

9.混合診療解禁について
 保険診療と保険外診療の併用を認めるという、いわゆる「混合診療」については、すでに部分的に実施中とはいえ、アメリカの医療制度に例を見るように、低所得者のみでなく、広く医療格差を招く恐れもあり、厳しい制限の元で行われるべきである。
 また、不当な患者負担を招きかねないこと、医療の安全性をも損ないかねないことなどからも、無原則にこれを認めるべきではないと考える。
10.医薬品、医療機器、保健医療材料にかかる消費税について
 医療に係わる消費税については、医療関係者の間では、いわゆる「損税」として認識されていることに留意する必要がある。現実に設備投資、機械購入などに係わる消費税は、大きな負担になっている。
 かつて医療費のなかに調整されたとされる消費税であるが、その後の医療費引き下げの中、その効果は胡散霧消したと言える。この状況を放置すれば、次回の消費税引き上げの際には医療界全体に莫大な負担を強いることになりかねず、いまこれらを避けるべく十分の検討を急ぐ必要がある。
 平成9年度の与党税制改正大綱において、「消費税を含む税体系の見直しが行われる場合(中略)、社会保険診療報酬等の消費税非課税措置 に関しても、そのあり方について検討すること」が明記されている。 今後消費税を含む税体系の見直しが行われる場合には、社会保険診療報酬にかかわる消費税に関する仕組みや負担等も含め、そのあり方について検討することが適当であると考える。

ページトップへ▲


前のページにもどる

このホームページに掲載の記事・写真等の無断転用を禁じます。
すべての著作権は三浦一水及び三浦一水事務所に属します。
Issui Miura (c) 2009 All Rights Reserved.